訪問リハビリの一番の特徴は、自宅でリハビリをするという点です。
自宅でリハビリをするという事は、病院にあるような大きな検査機器などはありません。
また、広いスペースも確保できない為、一般的に歩行の評価で用いる10メートル歩行テストなどの評価をすることが難しいのが現状です。
しかし、理学療法士である以上『評価』は必ず実施する必要があります。
今回は、訪問リハビリの現場で働く私が訪問リハビリで行うことのできる評価方法を集めてみましたので紹介します。
握力
握力測定は握力計があれば、自宅でも測定可能な簡便な評価です。
下記のグラフは加齢に伴う握力の変化です。
男性は35~39歳、女性は45~49歳がピークとなっています。その後は緩やかに低下していきます。
少し脱線しますが、握力は25年後の歩行速度や立ち上がり能力を予測する指標としても有用とされています。
【文部科学省;平成26年体力・運動能力調査結果より引用】
下腿周径
下腿最大周径は全身骨格筋量や栄養状態、体重との関係があると報告されています。
また、サルコペニア推定のための下腿周囲長の最適カットオフ値は男性で34cm、女性で33cmです。
時間もかからず、メジャーのみで測定可能であり、オススメの評価です。
SPPB
SPPB(Short Physical Performance Battery)は①バランステスト、②歩行テスト、③椅子立ち上がりテストの3つからなる簡易身体能力バッテリーです。(Guralnik et la, 1994)
サルコペニアの分野で活用されており、バランス・歩行・強さ・持久力の身体能力の測定が可能とされています。また、ADL(日常生活動作)との関連性もあるとされています。
一番の特徴は、『時間がかからず・スペースもいらず・特殊な道具もいらない』という点です。
訪問リハビリにおいては上記した条件が非常に大切でありますので、訪問リハビリにおいては非常に良い簡易身体能力バッテリーと言えるのではないでしょうか?
では、方法を説明していきます。
Short Physical Performance Battery【評価表(引用)】
バランステスト
まず、閉脚立位が10秒できるかを評価します。
ルールとしましては、歩行補助道具(杖や歩行器など)は使用しないこと。手でバランスをとったり膝を曲げても良いとされています。
10秒可能な場合はセミタンデム立位の評価に移ります。
不可能だった場合は歩行のテストに移ります。
セミタンデム立位は片足の踵ともう片足の親指を付けた状態で 10 秒保持可能かを評価します。
10秒可能な場合はタンデム立位の評価に移ります。
不可能だった場合は歩行のテストに移ります。
タンデム立位は片足の踵ともう片足のつま先を付けた状態で 10 秒保持可能かを評価します。
評価の点数は以下の通りです。
閉脚立位 | 10秒可能→1点 |
10秒未満→0点 | |
実施困難→0点 | |
セミタンデム立位 | 10秒可能→1点 |
10秒未満→0点 | |
実施困難→0点 | |
タンデム立位 | 10秒可能→2点 |
3~9.9秒→1点 | |
3秒未満→0点 | |
実施困難→0点 |
歩行テスト
歩行テストの一番の特徴は、助走距離が不要という点です。
また、4メートルという歩行距離である為、訪問リハビリの環境でも測定可能な場合が多いと思います。
普通の速度で4m歩行しその時間を2回測定します。
測定のルールは以下の通りです。
①被験者はスタートラインに足をそろえる
②合図とともに被験者が歩き始めたら時間を測定
③片方の足がゴールを超えたら測定ストップ
④ゴールでは止まらずにラインを越えてもらう
とされています。
また、歩行補助道具(杖や歩行器など)の使用も可能とされています。
評価の点数は以下の通りです。
4.82秒未満 | 4点 |
4.82秒~6.20秒 | 3点 |
6.21秒~8.20秒 | 2点 |
8.70秒以上 | 1点 |
実施困難 | 0点 |
椅子立ち上がりテスト
椅子立ち上がりテストは5回立ち座りを行い、その時間を測定します。
まずプレテストとして、胸の前で腕を組み、椅子から立ち上がります。
その後、本番となります。
本番はプレテストと同様に腕を組んだまま、素早く椅子から立ち上がる、座るを5回繰り返した時間を測定します。
評価の点数は以下の通りです。
11.19秒未満 | 4点 |
11.20秒~13.69秒 | 3点 |
13.70秒~16.69秒 | 2点 |
16.70秒以上 | 1点 |
60秒以上、実施困難 | 0点 |
立ち上がりテストは下肢筋力との中等度の相関関係が報告されています。
活動量計
最後に
今回は、自宅で行うという特徴を持った訪問リハビリにおいての簡便に行える身体機能評価方法を説明しました。
機能面も大切ですが、やはり生活期では生活を捉えることがより重要になってきます。
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生活レベルでも評価し、機能面でも評価し、しっかりとリハビリ専門職としての専門性が出せると良いですね。
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