リハビリ

自立支援と重度化防止の取り組みについて訪問リハビリの視点で考える

自立支援と重度化防止

地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律のポイントとして、
『高齢者の自立支援と要介護状態の重度化防止、地域共生社会の実現を図るとともに、制度の持続可能性を確保することに配慮し、サービスを必要とする方に必要なサービスが提供されるようにする。』
という文章が厚生労働省から2017年6月2日に発表されました。
以前から発表されていた内容ですが、『案』が削除されました。

以下、平成29年5月30日に行われた未来投資会議(第9回)の内容です。

【未来投資戦略(具体的施策案)】以下、首相官邸HPより引用
自立支援・重度化防止に向けた科学的介護の実現
・どのような状態に対してどのような支援をすれば自立につながるか明らかにし、自立支援等の効果が科学的に裏付けられた介護を実現するため、必要なデータを収集・分析するためのデータベースを構築する。本年度中にケアの分類法等のデータ収集様式を作成し、来年度中にデータベースの構築を開始し、2019年度に試行運用を行い、2020年度の本格運用開始を目指す。
・次期介護報酬改定において、効果のある自立支援について評価を行う。
・データ分析による科学的な効果が裏付けられた介護サービスについては、2021年度以降の介護報酬改定で評価するとともに、そうしたサービスが受けられる事業所を厚生労働省のウェブサイト等で公表し、国民に対する「見える化」を進める。
(以上、首相官邸HPより引用)

また、平成30年介護報酬改定の一つの柱に『自立支援・重度化防止に向けた保険者機能の強化等の取組の推進』という項目があります。
超少子高齢化時代となり、自立を支援する時代ではなく、自立をしなければいけない時代になってきていると思います。
自立支援介護の取り組みが各施設等で行われる中で、最期まで自宅で自立した生活を送る為にも、訪問リハビリとしても自立を支援していく必要があります。
今回は訪問リハビリにおける自立支援の在り方について考えてみたいと思います。

転倒予防に対する取り組み

なぜ転倒を予防しなければいけないのでしょうか?
それは、移動する際の骨折を防ぐためです。
移動能力は自立には重点項目です。
何かに躓き、体勢を崩すと転倒し、転倒を回避できないと強く力が加わり場合によっては骨折をします。
これが大半を占める骨折の発生の機序です。
若者でも躓くということは日常茶飯事です。
しかし、骨折しないということは骨折の前段階である転倒を防ぐことのできる能力が備わっているからです。
現在、転倒予防に対して特に重要とされている能力は以下の項目です。
①協調性
②深部感覚
③反射
④筋力
様々な転倒予防体操がある中、私が注目しているのは、慶應義塾大学保健管理センターの辻岡三南子先生はじめ、多くの学者が効果を検証している『太極拳です。
太極拳は様々な流派や方式があるようだが、ゆっくりとした動作で重心を移動する運動です。
心肺機能や筋力、柔軟性、バランスなどに効果があるとされています。
道具も不要で狭いスペースで可能な為、自主練習をアプローチ方法の一つとしている訪問リハビリでは太極拳指導も移動の自立の為の転倒予防策としては良いのかもしれません。

経口摂取、肺炎の減少に対する取り組み

自立支援介護では常食の経口摂取が一番肺炎を発生させ難いという考えの下、常食の経口摂取を積極的に勧められています。
常食を摂るという事は必ず咀嚼が必要となります。
咀嚼をすると唾液の分泌が促され、口腔内を清潔に保つことができます。
口腔内を清潔に保てれば肺炎を発生させにくくなるとされています。
しかし、訪問リハビリの現場では直接食事の様子を評価することもできませんし、刻み食の人に「明日から常食にしてくださいね」とも言えません。
訪問リハビリの役割としては以下の点が重要だと考えます。
①食事の状況(ムセの有無など)を本人や家族に聴取し、把握および助言する
②食事の状況により食形態の変更の可能性を判断し、VF(嚥下造影検査)やVE(嚥下内視鏡検査)をできる病院を紹介する
③主治医に報告・相談をし、指示を頂き、指導する
④ST(言語聴覚士)に評価を依頼する
⑤床にしっかりと足が設置するような食事姿勢を指導する
以上のことをすることが訪問リハビリの理学療法士や作業療法士が担う役割ではないでしょうか?
また、肺炎予防に関しては口腔ケアが非常に重要とされています。
⑥口腔ケアの指導、家族指導
も大切な訪問リハビリでできることかもしれません。

教育に対する取り組み

『自立支援』についての周知はまだまだ不十分です。
自立支援は医師、看護師、介護福祉士、リハビリ専門職…。
どの専門職であっても、一人で行える領域は限られています。
地域には引っ張っていくリーダーが必要です。
リハビリテーションマネジメント、リハビリテーション会議を経て培った能力を活かす時かもしれませんね。
理学療法士や作業療法士、言語聴覚士は介護保険サービスの中では、比較的医療のメカニズムについての知識がある職種だと思います。
専門性である科学的根拠に基づく理論付けは他職種協働の中でもリハビリ専門職の担うべき役割だと思います。
訪問介護や訪問看護、デイサービスやデイケアの他職種に対してもリハビリ職の視点での指導は必要なことだと思います。
また、他職種の視点をリハビリ職もしっかりと受け入れ、双方に教育するという体制の構築も重要だと思います。
訪問リハビリの現場レベルでは、今後在宅医療が推進される中、必要とされるだろう訪問セラピストの育成も重要な課題と考えています。
何より自身成長が必要ですが…。
少しでも地域の為に育成に関われる訪問理学療法士になれるよう努力はしていきたいと思います。

介護度改善に対する取り組み

介護度の改善自立支援の大きな目標です。
介護度が改善するということは、介護してもらうことが減り、自身でできることが増えるということです。
介護度別の介護が必要なレベルは以下の通りです。
要支援1:生活機能の一部がやや低下
要支援2:生活機能の一部に低下
要介護1:部分的な介護を要する状態
→立位および歩行能力が低下、整容などに介護を要する
要介護2:軽度の介護を要する状態
→立位および歩行能力が低下、排泄や洗身などの一部または全てに介護を要する
要介護3:中等度の介護を要する状態
→立位および歩行能力が著しく低下、排泄や洗身・更衣などに全体的に介護を要する
要介護4:重度の介護を要する状態
→排泄や洗身・更衣などの日常生活の全体的に介護を要する
要介護5:最重度の介護を要する状態
→意思の伝達が困難、日常生活の全体的に介護を要する

介護認定に関してはこの記事を読んで頂ければ理解が深まると思います。

『意外と知らない要介護認定』と訪問リハビリ

要支援1の区分支給限度額は49,700円、要介護5は358,300円で介護度が上がれば、国の負担は軽減されます。これから介護度の改善に僅かであるが、加算がつくかもしれないという話も挙がっております。
介護保険の存続の為にも、自立支援の為にも、介護度の改善に対する取り組みは非常に大切です。
では、訪問リハビリでは何ができるでしょうか?
日常生活で何が問題なのか?何ができて何ができないのか?
実際の生活場面でリハビリテーションを提供できるのは訪問リハビリだけです。
要介護度をしっかりと理解して、介護度別に実際の生活環境で一つ一つできることを検討し解決していくことが訪問セラピストの役割だと思います。

NOオムツおよび排泄の自立に対する取り組み

オムツの装着は様々な悪影響があります。
大きな項目は以下の通りです。
①かぶれ
オムツ装着者のほとんどが、皮膚疾患があると言われています。
②不快感、精神的苦痛
オムツに排便する。これは誰もが感じる「嫌」なことです。
③感染
尿路感染、膀胱感染等様々な感染リスクがあります。

したがって、オムツを外すということはこのような要素を無くすことができるといった非常に大きなメリットがあります。
しかし、必要だからオムツを付けているのです。

起き上がり→移乗→移動→トイレ動作
Pトイレの場合や尿器の場合は少し異なりますが、排泄にはこの一連の動作が必要になります。
また、失禁や便秘等について異常がある方はそれに対してもアプローチする必要があります。
訪問リハビリにおける排泄に対する取り組みは以下のことが重要だと思います。
①排泄の一連動作の評価及び動作練習
②排泄方法の検討
③動線および環境の整備
④排便、排尿状況の把握および医師へ状況の報告
⑤介護指導
⑥服薬状況の把握
特に①の動作の確認は訪問リハビリで担う重要な項目だと思います。
例えば、1)起き上がり、2)移乗、3)移動、4)立ち上がり、5)トイレのドアの開閉、6)下衣の着脱、7)後始末、8)流す、9)手を洗う……。
様々な一つ一つの動作が自宅の環境でできる必要があります。
排泄は利用者さん自身も非常に気にされている問題です。
誰もが「下の世話はしてもらいたくない」「家族に手伝ってもらうのが嫌だ」と感じていると思います。
訪問リハビリのという自宅環境で行うことができるという最大の特徴、メリットを有効に活用して排泄の自立を支援していきたいですね。

ロボット介護時代に対する取り組み

(以下、厚労省HP未来投資会議より引用)
今後の介護ロボット等開発では、自立支援等による利用者の生活の質の維持・向上と、介護者の負担軽減の両方を実現するため、現場のニーズを真に汲み取って開発シーズとつなげられるよう、プロジェクトを牽引するプロジェクトコーディネーターを新たに育成・配置する。
『人がいなければロボットに頼る』
そんな時代が目の前に迫ってきています。
トイレに連れてってくれる。
食事を食べさせてくれる。
状態を確認してくれる。
話し相手になってくれる。
歩かせてくれる。
一家に1台介護ロボットになるかもしれませんね。(笑)
訪問リハビリでは今後、
①ロボットの使用方法の説明
②ロボットと協働?
③ロボットへの指導?(笑)
なんていうのもあるかもしれませんね。(笑)

認知症改善に対する取り組み

高齢者の中で約4人に1人が認知症又は予備軍
これから認知症の人がさらに増加されると言われています。
そんな中、わが国では、認知症の人を単に支えられる側と考えるのではなく、認知症の人が認知症と共により良く生きていくことができるような環境整備が必要という事で、
『新オレンジプラン』ができました。
新オレンジプランの基本的な考え方
『認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現を目指す。』
です。
新オレンジプランの7つの柱は以下のようになっております。
①認知症への理解を深めるための普及・啓発の推進
②認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供
③若年性認知症施策の強化
④認知症の人の介護者への支援
⑤認知症の人を含む高齢者にやさしい地域づくりの推進
⑥認知症の予防法、診断法、治療法、リハビリテーションモデル、介護モデル等の研究開発及びその成果の普及の推進
⑦認知症の人やその家族の視点の重視

訪問リハビリでは、何ができるでしょうか?

私は、一番大切なことは認知症の方たちへの接し方だと思います。
訪問リハビリの現場で、ご家族様が認知症の利用者さんに強く当たっている、という現場を良く目にします。リハビリ職員がいる状態でもそのような態度ということは日常ではもう少し…。という感じだと思います。
しかし、それは仕方のないことかもしれません。認知症と分かっていても毎日だとイライラしてしまうはずです。
認知症をご家族様に理解してもらうことが重要になると思います。
認知症とは何なのか?認知症とはどのように関わるか?
しっかりと時間をかけて説明していく必要があると思います。

また、私は『認知症に対する取り組み=自立支援』だと思っています。
自立支援をしていけば認知症は治るという学者もいます。
全てが繋がっていると思います。
移動が不可能、排泄が不可能、食事が不可能…。
それが認知症を重症化させる要因の一部だと思います。

家族の介護負担軽減

訪問リハビリの現場で働いていると、
『献身的に介護をされている家族はすごい』
といつも感じています。
365日相当な苦労があると思います。
できることが増えていけば、手伝うことは減ります。
自立すれば、家族の介護負担は軽減されます。
最近では介護の為に会社を辞め、介護をしなければいけないという現状がみられています。
会社を辞め、介護をするということは家計へのダメージも日本経済へのダメージも共に影響があります。
私は、日中1人で生活をする為の条件は、『移動ができること』と『排泄ができること』『食事が摂れること』だと思います。
自立支援へのアプローチは全てが繋がっています。
自立をすれば、家族にとっても非常に喜ばしいことですね。
その為にも『移動』『排泄』『食事』に対するアプローチを訪問リハビリでは重点的に実施する必要があります。
また、自立はご家族様にとっても良いもの、ということを伝え、協力して頂く必要はあるかもしれませんね。

社会参加支援への取り組み

社会参加支援についてはこの記事を読んでみて下さい。

訪問リハビリにおける社会参加支援加算とは?

社会参加支援加算新設から1年経過した現状

訪問リハビリにとって社会参加支援とは、『自立させること』『デイサービスやデイケアに繋げることです』
訪問リハビリは特殊性があり、メリットも多いですが、デメリットも多いです。
1番のデメリットは時間が少ないという事です。
なかなか限界があります。
デメリットについてはこの記事も読んでみて下さい。

訪問リハビリのデメリットを考える!

デイサービスやデイケアの力を借りる為に、社会参加させるということも自立支援の第一歩だと思います。

介護予防に対する取り組み

要介護度の改善は大切なことですが、悪くさせないということも同じように大切であり、介護予防は理学療法士や作業療法士のリハビリ専門職に与えられた課題です。
最近では地域ごと独自の体操などもあり、地域全体を予防していくという取り組みも盛んに行われています。
老人クラブ、自治会、ボランティアなどの活動にもPT/OT/STとして積極的に参加していくということも大切なことだと思います。
介護予防は健康増進期とも言われています。
訪問リハビリでは、本人や家族の身体機能の評価や活動範囲の評価などを行い、様々な点でアドバイスをすることが大切だと思います。
誰もが少しずつ身体機能が低下する可能性があります。予防の時期に様々な情報を収集できていることや関係性を築いていくことがその後のステージに移行した際は大きな影響があるかもしれませんね

まとめ

自立支援と重度化防止の取り組みについて訪問リハビリの視点で考えてみました。
皆様はどのように考えますか?
私の考えが少しでも皆様にとって有益になれば嬉しいです。
自立支援には様々な要素が繋がっており、リハビリ専門職(PT・OT・ST)や訪問リハビリのみでは不可能です。
他職種が協働し、皆様で自立支援に同じ方向を向いて取り組んでいけたら良いですね。

追伸:職場選びは非常に大切です。 ↓オススメの転職サイト↓ 介護職の方のための転職・就職支援【マイナビ医療介護のお仕事】

ABOUT ME
杉浦 良介
静岡県出身・在住の理学療法士(PT)です。 訪問リハビリの分野が大好きです。 人と人を繋ぐ理学療法士を目指しています。 訪問リハビリが好きな人・訪問リハビリについて知りたい人・繋がりたい人・悩んでいる一般の人…ドシドシお問合せ下さい! 相談されると喜んで返信します(笑) まずはお問い合わせから連絡をお願いいたします。 Twitter・Facebookのフォローもどうぞよろしくお願いします。